前回、前々回、「メールの振り返りをする上での基礎知識 - デジタル社会を泳ぐイルカ」や「メール施策の振り返り方 - デジタル社会を泳ぐイルカ」にて、メールの振り返りをするでの基礎知識や振り返り方を記載してきましたが、いかがでしたでしょうか。気になっていることなどあれば、是非コメント等頂ければと思います。
今回は、すごく簡単な記事ですが、メールの振り返り方などは分かったが実際どうやって改善すれば良いのかの少し具体的な話を紹介できればと思います。
目次
はじめに
前提として、マーケターの方々やサポート等でアドバイスをする立場にある人達は、結局数値は可視化されたが何をすればよいのか分からないといったケースは非常に多いのではないでしょうか。特にアドバイスをする側としては、業界によっても商材によっても各指標が大きく変わってしまうため、企業ごとに数値がこの程度が理想だということをはっきりと伝えにくいのも事実だと思います。
では、どのように改善をしていくべきなのかという部分に少しでも参考になればと思い、実際のケースをご紹介できればと思います。
メール改善のアクション例
前提
では、メール改善のアクション例をご紹介できればと思いますが、今回は単価が5,000円程度のオンラインショップを運営しており、四季によるシーズン特性がある商材を扱っている企業、より具体的に考えてもらえるようにDolphin社としますが、そこでどういった取り組みが良さそうか、ご紹介していきます。あくまでも実際の例というよりは、私の個人的な意見としてお話ししていきますので、指標などは全て、任意で設定しております!笑
まずやるべきこと
メールの改善をする上では、最初に「誰に」、「どのようなコンテンツを」、「どのタイミングで」、アプローチするのかを考えることが非常に重要になります。そして、特に今回は「誰に」という部分の話をここでは記載していきます。コンテンツやタイミングも非常に重要となりますが、コンテンツの改善は定性的な部分もありますし、前回の記事でクリック率の改善のためにどうすれば良いか簡単に触れましたが、その内容と被ってしまう部分もあるため、割愛いたします。また、タイミングに関しても同様に前回お話ししたようにGoogle Analyticsなどのサイト解析を通じて、よくサイトにユーザーが流入するタイミングでの配信が望ましいため、ここも割愛いたします。
では、「誰に」という部分をどのように考えていくと良いでしょうか。そのために、重要となるのは現状分析となります。例えば、Dolphin社では初回購入から2回目の購入までの間隔(F2転換までの日数)が男性の場合、平均して50日で、女性の場合は平均して30日だとします。そして、凡そ100人が初回の購入すれば40人が2回目の購入に至るという分析結果が出ていたとします。ちなみに、この結果を算出する上では以下のようなレポートを見ておりました。
配信ターゲット選定の上で利用していたレポート(11月1日時点の状況)
初回購入タイミング | 性別 | 初回購入人数 | 2回目購入人数 | F2転換率 | F2転換までの日数(平均) |
---|---|---|---|---|---|
2022年10月 | 男性 | 2,457 | 601 | 24.5% | 37.0 |
2022年10月 | 女性 | 3,930 | 1,171 | 29.8% | 18.3 |
2022年09月 | 男性 | 2,596 | 1,118 | 43.1% | 51.0 |
2022年09月 | 女性 | 3,614 | 1,329 | 36.8% | 27.8 |
2022年08月 | 男性 | 2,413 | 960 | 39.8% | 54.8 |
2022年08月 | 女性 | 3,983 | 1,748 | 43.9% | 32.1 |
では、このレポートを見て、次に何を考えるべきかと言えば目標数値を決めることです。例えば、先ほど記載してしまいましたが、Dolphin社でKPIとして追っている数値(KPI)には以下の3つがあります。
KPI名 | KPI値 |
---|---|
男性のF2転換までの日数 | 50 |
女性のF2転換までの日数 | 40 |
F2転換率 | 40% |
そうすると、男女ともに、F2転換までの日数は2ヶ月以下の数値になるため、今日時点(2022年11月5日時点)で考えるべきことは、月末までに如何に2022年10月の初回購入者を2回目購入に至らしめることが出来るかということです。また、F2転換率に関しても、目標を40%と定めているため、残りの10%~15%程度の2022年10月の初回購入者を月内に2回目購入に持っていけるかが非常に重要となります。そのため、施策としては、初回購入から30日後に追客で人気ランキングを送るという施策をやってみることにしました。
そこで実際に施策をメール配信を開始しますが、その際に上記で見たレポートや前回の記事で記載したメールレポートが非常に重要となってきます。
施策の振り返り
では、施策を実施することにより結果はどうなったでしょうか。
配信ターゲット選定の上で利用していたレポート(11月10日時点の状況)
初回購入タイミング | 性別 | 初回購入人数 | 2回目購入人数 | F2転換率 | F2転換までの日数(平均) |
---|---|---|---|---|---|
2022年10月 | 男性 | 2,457 | 895 | 36.4% | 47.4 |
2022年10月 | 女性 | 3,930 | 1,422 | 36.2% | 26.3 |
2022年09月 | 男性 | 2,596 | 1,143 | 44.0% | 51.9 |
2022年09月 | 女性 | 3,614 | 1,329 | 36.8% | 28.5 |
2022年08月 | 男性 | 2,413 | 981 | 40.7% | 54.9 |
2022年08月 | 女性 | 3,983 | 1,779 | 44.7% | 32.8 |
2022年10月の数値は目標値に近づいて来ましたが、残りの期間で本当に目標値に達するかが分からないという状況でした。ただ一方で、ターゲットを選定する上で定めた指標が本当に達成されていそうかどうかを数値を見て、追いかけるということがまず出来ていることが非常に重要です。個人的な感覚もありますが、そもそもこういった形でレポートを見て、各数値を見た上で施策を考えている企業も実は多くないですし、施策をする上での目標も、施策を実施して結果がどう変わったかもあまり意識出来ていない企業が多いのではないかと思います。
次に、この数値が目標値に達していない原因はそもそも何なのかという部分を分解していくことが大事ですが、それが季節性によるものや外因性のものなどいろいろ考えられるかと思いますが、ここではメールの施策観点から次に振り返ってみましょう。Dolphin社では次の数値をメールレポートとして見ておりました。
メールレポート
配信施策名 | 配信対象者数 | 配信数 | 配信成功数 | 配信成功率 | 開封数 | 開封率 | クリック数 | 反応率 | LP遷移数 | LP通過率 | 直接CV数 | LP通過からの直接CV率 | 直接CV金額 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全体向けメルマガ | 348,205 | 139,282 | 138,028 | 99.10% | 23,878 | 17.30% | 2,411 | 10.10% | 409 | 17.00% | 203 | 49.70% | ¥1,015,000 |
F2転換施策 | 6,387 | 2,554 | 2,536 | 99.30% | 1,432 | 56.50% | 131 | 9.20% | 33 | 25.90% | 21 | 64.90% | ¥105,000 |
この結果からDolphin社のマーケターは、全体向けメルマガの反応率よりも、F2転換施策の反応率が低くなっていることを踏まえて、正直もっと反応率を上げることは出来るんじゃないかと考えました。それこそ、現在の反応率が9.20%となっておりますが、この数値が全体向けメルマガの1.2倍程度の12.00%だった場合、純粋に直接CV数が21件から7件増えて28件となるということが分かります。
施策の改善のためのアクション
では、どのようにして反応率を上げれば良いか、ということを次に考えますが、これは前回の記事「メール施策の振り返り方 - デジタル社会を泳ぐイルカ」に書いたように以下の2つの視点で振り返りを実施します。
- メール件名とメールコンテンツの内容の乖離がないか
- ファーストビューのわかりやすさ
そして、この2つの視点をもとにコンテンツの修正をかけていくことになります。では、いざ修正をかけようとして、修正したコンテンツを配信しますが、何が良いかを見極める上ではABテストを実施していく方が良いかと思います。

そうすると、複数のコンテンツにおいて、一気に良し悪しを判定することが出来るようになるため、非常に有効的な手段となっていきます。
ただ一方で、ABテストを実施する際に対象者が少なくなるため、どの程度の対象者がいれば良いのかという疑問が発生するかと思います。それに対しては明確にこの人数がいれば良いということはないですが、求める指標に対しての影響範囲で考えれば良いかと思います。統計学的には、分散の大きさが小さくなるかどうかを算出するべきかと思いますが、目安としては500人の以上の規模で各グループの対象指標の母数が取れれば凡そ問題ないかと思います。具体的には、グループAでクリック者数が560人、グループBで510人のような規模感で数値が出せれば凡そコンテンツAとコンテンツBのどちらが良いか判定しても良いかと思います。とはいえ、タイミングなどにも影響はあるため、1回の結果でこの人数が出たとしても結論付けるのはリスクになるため、5,6回以上の配信を実施した上で結果を見たほうが良いかと思います。
さいごに
今回のケースだと、正直何ヶ月か施策を繰り返す必要が有るかと思いますが、こういった地道なPDCAを色んな施策で回し続けることが、効果を上げる上で非常に大事になってくることは色んな企業を見てきましたが事実かと思います。今回のあくまでも一例にしかならないかもしれませんが、重要なことを再度以下に纏めますので意識してみてください。
- 施策を実施する上で、「誰に」、「どのようなコンテンツを」、「どのタイミングで」、アプローチするのかを考える
- 特に「誰に」を考える上では、現状の顧客状態を把握するための分析を実施して改善するためのKPIを定める
- KPIを定めたら施策を実施し、結果を確認する
- 施策結果を踏まえて、改善ポイントを洗い出し、ABテストなどを実施した上で施策の改善につなげていく
少し長い記事になりましたが、今回の結果を出す上で非常に重要な部分かと個人的にも考えておりますので、ぜひ見てみてください!