前回の記事では、メールの振り返りをする上での基礎知識として、以下2つをしっかりとキャッチアップしてほしいなと思っておりましたが、いかがだったでしょうか。
- メール配信における企業側とエンドユーザー側のプロセス
- メール配信における重要指標
ただ一方で、前回は指標まで紹介しただけだったので、「結局振り返りはどうやればいいの?」という方も多いかと思い、今回はより具体的な振り返りの観点や例をご紹介していきます。
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目次
前回の振り返り
前回紹介したエンドユーザーのメール受信から購買までのプロセスとメールにおけるプロセス改善指標を再度以下に共有します。


では、早速ですがこの図で各指標を利用してどのような振り返りをするのか、お話ししていきます。(定義を確認したい場合には「メールの振り返りをする上での基礎知識 - デジタル社会を泳ぐイルカ」を参照してください!)
各指標の定性的な意味
ここから前回紹介した指標を元にしたメールの振り返り方法を具体的にお話ししていければと思いますが、そもそもどのように指標を見るべきかを考えていきましょう。実際に、「配信数が20,000件で、配信成功数が19,500件でした」と言われてもどう改善されているかが分かりにくいため、基本的には該当プロセスが一つ前のプロセスからどの程度減少しているか、その割合(「歩留まり」と以降は記載します)を見て把握することが多いです。その際に、よくメールマーケティングのツールや手元で以下のようなレポートを作成することが多いです。
メールの配信結果を振り返る上でのレポート例
配信施策名 | 配信対象者数 | 配信数 | 配信成功数 | 配信成功率 | 開封数 | 開封率 | クリック数 | 反応率 | LP遷移数 | LP通過率 | 直接CV数 | LP通過から直接CV率 | 直接CV金額 | 配信停止数 | 配信停止率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
施策A | 20,050 | 20,000 | 19,436 | 97.18% | 4,633 | 23.84% | 463 | 10.01% | 85 | 18.38% | 7 | 8.80% | ¥42,000 | 79 | 0.395% |
施策B | 30,150 | 30,000 | 29,034 | 96.78% | 5,742 | 19.78% | 593 | 10.34% | 86 | 14.63% | 10 | 12.63% | ¥60,000 | 137 | 0.457% |
施策C | 75,300 | 75,000 | 73,425 | 97.90% | 13,847 | 18.86% | 1,548 | 11.18% | 290 | 18.78% | 32 | 11.16% | ¥192,000 | 209 | 0.279% |
施策D | 45,100 | 45,000 | 44,518 | 98.93% | 9,420 | 21.16% | 1,103 | 11.71% | 212 | 19.25% | 23 | 11.25% | ¥138,000 | 106 | 0.236% |
では、このレポートを利用して、どのように振り返るのかという部分をここからは一つ一つの指標に対して、示していきます。
配信対象者から配信数
配信対象者から配信数への歩留まりに関しては、そもそもメールアドレスが存在しない対象者がいる等で、そもそもの対象者から除外してしまえば問題ないかと思いますので、あまり言及はしません。ただ、メールアドレスに"@"がない等のそもそもメールアドレスとして成り立っていないメールアドレスを取得しないように、自社サイトのフォームの改善等を図るようにして少しでも改善は図ることも可能かと思います。
配信成功率
配信成功率は文字の通りですが、配信成功数を配信数で割り算した割合を表します。
ちなみに、配信数全体の内で配信成功にならないケースは配信失敗やバウンスと呼ばれており、具体的には「メールアドレスが誤っている」、「メール配信時に通信エラーが発生した」、「メールボックスが一杯で受信できなかった」などといった原因が考えられます。加えて、バウンスは区別してされており、ハードバウンスやソフトバウンスにわかることが出来ます。*1ハードバウンスに関してはどんなことをしても配信が出来ないため、次回以降配信しないと対象とするケースが多いですが、ソフトバウンスであれば一時的なエラーである可能性が高いため、タイミングを変えて配信することが有効な可能性が有ります。
一方で、配信成功率を改善することは、正直難しい部分もあるため、配信成功率が90%を切る等といったような異常値が出ない限りは特に気にしなくても良いかです。逆に90%を切るケースでは、何かしたら配信サーバーや大きな通信障害といったことが考えられるため、注意が必要です。
開封率
開封率も文字通りの定義ですが、開封数を配信成功数で割り算した割合を表します。そして、この開封率は、メールマーケティングにおいてもかなり重要視されている指標の一つです。
「では、具体的に開封率は何により影響を受けるのでしょうか?」
要素が一つではないため、簡単にこれが原因だということは非常に難しいですが、以下のようなものが影響要因と言われております。
- 送信元の名称
- 配信タイミング
- メール件名
- 配信対象者
想像してみて頂ければと思いますが、「ご自身がメールを受け取るユーザーだったときに、どんな基準で開封するでしょうか?」と言われれば、恐らく上の4つの要素が影響しているのは想像がつくかと思います。オンラインショップのメルマガや求人メルマガ等も、開封するかどうかは差出人を見て判定することも多いのではないかと思います。だからこそ、送信元の名称を分かりやすくすることは開封率の改善の上で重要です。
また、配信タイミングに関しても、開封するかどうかの上で非常に重要です。目安としては、サイトへのアクセスが多いタイミングなどをGoogle Analyticsなどで調査してみて、そのタイミングでの配信が良いかと思います。大概のケースでは、19時から21時頃のタイミングに多くの企業がメール配信を実施している印象ですが、自社サイトに来ているタイミングを見計らって配信タイミングは自社に合ったものにした方が良い気がしてます。
そして、開封において重要となる次の要素が、メールの件名です。凡そ、1秒間に5~10文字程度を人は読めるといわれているため、件名を読むのに2,3秒かかるとすれば、最初の10文字くらいで必要な情報や目を引く情報を入れられると非常に良いかと思います。多くの企業で色んな工夫をされておりますが、記号(★、【】)や配信対象者の名前、「セール、割引、xx時まで」といったキーワードにより、短い件名の中で目を引くものを提供していたりします。
最後の要素としては、配信対象者になります。当然ですが、商品を購入した翌日にサンクスメールでなく、購入促進メールを送ってもエンドユーザーに響かない等は発生するため、タイミングにも依存しますがエンドユーザーにとって最適なタイミングを検討した上で、対象者を絞り配信するようにしてみてください。
では、どの程度の開封率が目安になるのかというと、メルマガにおいては15%~20%程度と言われております。ただ一方で、この数値より少ないからもんだいだとか、この数値より圧倒的に高い水準だから大丈夫かと言われれば、正直これは個社ごとに違うため、自社にとっての現状と無理のない目標値を定めるようにしてください。また、何を改善すれば良いのかというのも実は個社ごとにメッセージも変わるため、ABテストなどで何度もテストして、最適化していくことが重要となります。確かに他社の施策例を参考にすることは非常に大事ですが、真似すれば良くなるということでもないため、数値を可視化して、現状を把握した上で、多々テストを繰り返してより良いものにしていくようにしてください。実際にメールマーケティングに成功している企業は、良い施策を出来ていることもありますが、どちらかというPDCAをちゃんと回していることが多いです。
反応率
次に反応率ですが、反応率はクリック数を開封数で割り算した割合となります。よくクリック率という指標と混同されがちですが、クリック率はクリック数を配信成功数で割り算した割合であることも覚えておく方が良いかと思います。
そして、反応率において重要なことは、「メールコンテンツ」になります。色んなものがメールコンテンツに集約されてしまいますが、少し分解すると以下を意識するとより良いコンテンツになります。
- メール件名とメールコンテンツの内容の乖離がないか
- 期待値がずれているとクリックされない傾向があります。
- ファーストビューのわかりやすさ
- メールを開いたときにスクロールせずに見られる部分ことで、ここにサイトへのクリック導線(CTA:Call To Action)を置くことが重要と言われます。また、海外のメールなどを購読すると分かりますが、実は海外では多くのメールでファーストビューのみに近いコンテンツやGIF画像を利用したコンテンツを送っている傾向があります。もしかするともうすぐ日本でもそういったメールが流行るのではないかと思います。また、開封と同じように「セール、割引、xx時まで」というものがファーストビューで分かりやすくしておくことが重要になります。
反応率の目安はコンテンツに依りますが、10%程度を目安にすると良いかと思います。ただ、開封率と同じで自社に合ったものをちゃんと見極めるほうが重要だということは理解しておいてください。
配信停止率
反応率と同様にメール開封後にエンドユーザーが取るアクションとしては、配信停止というものもあります。配信停止率については、配信停止数を配信成功数で割り算した割合となります。正直、毎日毎日配信したら配信停止が増えるんじゃないかと思われているマーケターも多いですが、実際に配信停止に影響するのは、配信対象者に対して適切なコンテンツを提供できるかの方が重要となります。
LP通過率
LP通過率は、正直ほとんど方がメールマーケティングにおいて、ちゃんと見ようと思ったことがないのではないかと思いますが、非常に重要な指標の一つであることは間違いないかと思います。定義としては、1-直帰率という形で算出することが出来ます。直帰率に関しては、直帰数をクリック数で割り算したものとなりますので、如何にメールをクリックしたユーザーにとって、ランディングページ(LP)が適切かどうかが重要となります。
それこそ、メールもコミュニケーションのため、メール件名にお得な情報が載っていて、いざコンテンツを見たときに全然お得じゃないとなれば、開封はするがクリックはしないですし、コンテンツまでお得だと思ってクリックして、サイトに来たら全然思っていたのと違うとなれば直帰してしまいます。だからこそ、如何にメール件名、メールコンテンツに対して、適切なLPになっているかは重要となります。逆に言うと、よくテレビCMなどで「続きはWebで」とありますが、それと同じようにメール件名、メールコンテンツにて、少しずつ情報を小出しにし、情報の枯渇感を与えることが大事です。
LP通過率や直帰率は、普段のサイト解析の中で算出されているものと比較して大きいかどうかで振り返るほうが良いかと思います。
直接CV率
直接CV率は、先ほどのレポートではLP通過から出しましたが、多くの場合は直接CV数を配信成功数で割り算して出すことが多いです。但し、それをしてしまうとどの歩留まりを改善すれば良いかが分かりにくくなるため、個人的にはLP通過からのCV率という形で出す方が改善はしやすいかと思います。
加えて、直接CVと敢えて記載しましたが、メールクリック後のサイト内での同一セッションでCVに至ったケースを直接CVと言います。逆に、メール配信後、サイトから離脱したり、セッションが切れてしまったが、その後数日経ってからCVに至ったものを間接CVと言います。*2
一方で、直接CVに関しては、サイト自体の改善はメールとは関係ないため、適切な方に適切なコンテンツを提供できているかが重要となります。また、直接CV率に関しても、メール以外からの流入時の直接CV率と比較してどの程度かを比較して振り返ると良いかと思います。
さいごに
ここまで様々な指標に関して、説明をしてきましたが、もし実際にメールマーケティングを実施している方やサポートされている方は、上のようなレポートを見て、改善アクションをとってみてください。確実にやらずにそれっぽく改善を図っているときよりもより良い結果を出せるかと思います。
今回はここまでとします。長文でしたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。
*1:「メールの振り返りをする上での基礎知識 - デジタル社会を泳ぐイルカ」の表にも記載。
*2:間接CVに関しては、メール配信から7~30日程度で定義されているマーケターが多いイメージです。