メールの振り返りをする上での基礎知識

 前回、以下の記事でマーケターの方々、メールマーケティングを実施し、その改善を図ろうと躍起になっている一方で、そもそもメールの改善以前の部分で止まっているケースが多いということを記載致しました。では、本日はメールを振り返る上での基礎知識を紹介し、そういったマーケターの方が悩んでいることに少しでも助けになればと思ってます。
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目次

メールを配信におけるマーケターの状況

 早速ですが、マーケターの方々がメール配信について、上司から与えられる質問と言えば、「メール経由でどれだけ売上が上がったの?」「メール経由でどれだけリストが獲得出来たの?」といったようなものではないでしょうか。それが故に、「配信数が多い方が正直売上が上がるし、全体向けの配信をガンガン配信しておけば良いか」と言って、ほぼ毎日に近いメール配信を実施しているマーケターの方々も意外といるのではないでしょうか。(普段、メールを受け取られている方々であれば、感じている方々もいるかもしれないですが…笑)
 その配信を続けても正直問題ないということであれば、全然問題ないと思いますが、不用意に配信をし続けることで、メールの配信停止をするケースも増えていき、自らアプローチできるエンドユーザーを減らしてしまうという事態も招きかねないため、マーケターの方々はもっと良い配信はないかと他社事例をあさっては、他社でやっている施策を実施しようと躍起になります。ただ、一点注意しなければならないのは、他社でやっているから自社でも成功するといったことや、他社でやっているからメールの配信停止を気にしなくても良いということは一切ないということも事実です。だからこそ、本来的には自社でやるべき施策を自社内で生産するべきかと思いますし、その過程で他社の事例を参考にするなら良いかと思います。
 加えて、色んな企業様や自社のマーケティング担当ともお話しする中で、他社事例を参考にするケースは非常に多くの企業で実施されておりますが、自社のメールの配信数や開封率、クリック率、CV金額などの指標をある程度把握していたり、各プロセスに対して目標を置いている企業は意外と少ない気もしております。
 しかし、本当に大事なことはメールからの売上を上げるという目的において、他社事例を把握することは手段の一つとしては重要ですが、自社のメールの評価を正しく出来ていることも非常に重要だということを認識しておくことです。(「そもそもメール以外のアプローチもあるでしょ?」という疑問もあるかと思いますが、それは一旦追及しないで進めます。)

メール配信において把握するべきものとは?

 では、「ここまでで自社のメールを評価しろと書いてあるが、そもそも何をすれば良いのか?」という疑問が次に出てくるかと思いますので、そこへの回答をこの章では記載していきます。
 そもそもメールマーケティングをされている方の多くは、メール配信において、「開封率」や「クリック率」、「CV数」が大事ということは把握しているかと思いますので、少しこれらが何により改善されうるのかというをエンドユーザー視点も絡めて考えていければと思います。すごく当たり前の話かもしれませんが、非常に重要なのでちゃんと読んでみてください。
 メール配信においてのプロセスを以下の図に記載してみましたので、まずはこれを見てください!

企業側のメール配信の概念図
エンドユーザーのメール受信から購買までのプロセス

 こうやって、図を見ても非常に当たり前の内容かもしれませんが、メール配信においては、企業側の視点とエンドユーザー側の視点があること、ユーザーはメールを受信した後に、開封し、クリックし、サイト回遊した上で初めてメール経由での購入に至るということ、この2つを改めてしっかりと認識してください。
 そして、このプロセスを理解した上で、メール配信における重要な指標である「配信数」、「配信成功数」、「開封数」、「クリック数」、「直帰率」、「CV数」という指標がどのような意味を持つかを考えることが重要です。
 「正直、たくさん配信していけば、売上も上がるし、それでいいじゃん。」という方々もいるかと思いますが、メール配信を改善したいのであれば、答えはNoです。ビジネスにおける色んな課題解決の本にも書いてありますし、自分自身学生時代はずっと研究をしておりましたが研究において課題が発生した際にも強く感じておりましたが、課題を本質的に改善したい場合には、如何に課題を分解し、どの部分を改善すれば課題は解消されるのかを考えることが重要になるためです。それは、メールの改善でも同様で、配信数と売上しか見ていないマーケターにとっては改善するべきものを聞けば、「コンテンツをよくしろ」だったり、「配信する時間帯を変えろ」だったり、「対象者変えればいいじゃん」だったりといったあんまり本質的な改善案なのかわからない案が沢山出てきて、いざ実行してもあんまり意味ないことも非常に多かったりします。だからこそ、メール配信におけるプロセスを理解するとともに、どのプロセスが悪いかを洗い出すためにメールにおいても色んな指標があることを理解して下さい。どのような指標があるのかというものも以下にご紹介しますが、プロセスと関連付けて覚えておけると非常に覚えやすいかと思います。

メールにおけるプロセス改善指標

 とはいえ、初見の指標もいくつかあるかもしれませんので、一度各指標の定義をまとめておきましょう。
メールプロセスにおける指標一覧

指標名 定義 補足
配信対象者数 配信しようとする対象ユーザー数全員 メールアドレスがない方も包含。
配信数 メールアドレスが正しく登録されている、且つ、メールが配信停止などで出来ない方を除いた対象者への実際の配信ユーザー数 配信対象の中で、配信停止者やメールアドレスがあるが配信できないメールアドレスを除くケースも存在。
アドレス不正数 メールアドレスがそもそも正しく取得されていない、若しくは、メールアドレスが不正なアドレスのユーザー数 特になし。
配信成功数 配信数の内、実際にエンドユーザーにメールが届いたユーザー数 配信した内、バウンスにより配信できなかったユーザーを除いたもの。
ハードバウンス数 配信数の内、ハードバウンスにより配信出来なかったユーザー数 ハードバウンスとは、メールアドレスのドメインやメールアドレスが存在しない等で恒久的に配信出来ないこと。
ソフトバウンス数 配信数の内、ソフトバウンスにより配信出来なかったユーザー数 ソフトバウンスとは、配信先のメーラーの容量が一杯であるケースや、一時的なサーバーダウンで配信できないこと。
開封 配信成功数の内、実際にメールを開封したユーザー数 HTMLメールのみでしか取得不可能。*1また、iOS15によりiPhoneでは正確には開封が取得できないケースが存在。*2
クリック数 開封数の内、エンドユーザーがメールコンテンツ上のクリック導線(CTA:Call To Action)をクリックしてサイトに流入したユーザー数 クリックを取得する際にはメールコンテンツ側に広告パラメータを付与して、サイト側に設置しているアクセスログから判別。*3
配信停止数 開封数の内、配信停止リンクを踏み、配信停止したユーザー数 配信停止リンクを自社サイト内にある場合には、クリックとしてカウントされるため、クリック数との区別をするほうが良い。
LP通過数 クリック数の内、着地したページ(LP:Landing Page)を通過したユーザー数 クリック数全体から直帰数を引いたものと同等。
直帰数 クリック数の内、LPですぐに離脱したユーザー数 クリックからサイトに流入したが1PVしかしていないユーザー数
直接CV数 LP通過数の内、サイトを開封して最終的に直接CVに至ったユーザー数 LPからCVまでの導線が長い場合には、メール以外の改善が必要の可能性有。

さいごに

 長くなりましたので、今回はここまでとしますが、改めて、以下2点をちゃんと意識してみてください。

  1. メール配信における企業側とエンドユーザー側のプロセス
  2. メール配信における重要指標

 また、前回の記事では配信ツールの選定に関しても言及しましたが、上のような指標をすぐ出せるツールが個人的にはおすすめです!
 次回は実際にどのようにPDCAを回すのかの示唆が出せればと思います。

*1:HTMLメールでしか、取得できない原因は、多くのメール配信ツールでHTMLメールを配信する際に、1px×1pxの透明画像を埋め込み、その画像の読み込み時にメール配信ツール側のサーバーに来るリクエストにより判別をしているため。テキストメールの場合は画像の埋め込みが出来ないため、取得が出来ない。ただし、HTMLメールでテキストメールのようにテキストだけコンテンツを作っているケースにおいては、取得が出来るため、開封を取得した場合には有効な手段になる。

*2:AppleがITP(Intelligent Tracking Prevention)により、エンドユーザーのトラッキング情報を防止しており、その一環として、iOS15以降では、メールプライバシー保護として、Appleの標準メールアプリでは、エンドユーザーの開封タイミングやデバイスIPアドレスなどの情報が取得できなくなりました。

*3:メール配信ツールによっては、配信時にユーザー毎に別々のパラメータをリンク先URLに付与し、専用のタグをサイトに設置することで誰がメールをクリックしたかまで判別できます。