ロジカルシンキングの練習① ~数学の問題~

 ロジカルシンキングに関する記事を前回は出しましたが、今回はロジカルシンキングの練習として、1ケースご紹介出来ればと思います。
 中高の数学を学ぶ意味をあんまり感じられていない方も多いかと思いますが、中高で数学をやっている目的は科学技術の発展というものもある一方で、ある課題に対して論理的に考え、課題を解消していく思考力を鍛えるためでもあります。そのため、数学の問題の中で公式を知っているだけで解ける問題はあまりロジックシンキングの練習にはなりませんが、良問としてよく上がるような問題を解く分には非常にためになると思います。(ちなみに、あくまでも公式を知っていることで問題が解消出来るというのもビジネスにおいても同様なので数学を本当に志す方はしっかりと公式なども身に付けてください。笑)
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目次

今回取り上げる問題

 今回は、自分自身が勉強として使っているサイト(大学入試数学の問題)から問題をピックアップいたします。コロナが流行っていることもあり、少し馴染み深い問題かと思いますので、答えを見ながらでも論理展開を学んでください。

ある病気 X にかかっている人が 4 %いる集団 A がある.病気 X を診断する検査で,病気X にかかっている人が正しく陽性と判定される確率は 80 %であり,病気 X にかかっていない人が誤って陽性と判定される確率は 10 %である.
(1) 集団 A のある人がこの検査を受けたところ陽性と判定された.この人が病気 X にかかっている確率はいくらか.
(2) 集団 A のある人がこの検査を受けたところ陰性と判定された.この人が実際には病気 X にかかっている確率はいくらか.
[’15 岐阜薬科大]

 では、この問題を考える上で綺麗に回答することを意識して問題を解いてみてください!

ポイント

 この問題を回答するにあたって、(1)、(2)ともに、状況を図や箇条書きで物事を整理して考えるようにしてください。別に図や箇条書きで書かなくても良いですが、自分自身の思考を図や箇条書きの方が整理しやすく、周りの人間の思考も整理することが出来ます。
 また、状況を図や箇条書きで整理することも大事ですが、抽象的で話が分からない場合には具体例を何個か考えながら図や箇条書きに落としていきましょう。

問題の状況整理

 そうすると、(1)、(2)は以下の問いを回答することが大事であることがわかるかと思います。まさにこの問いの分解が前回ご紹介した「メインイシュー」を解決するための「サブイシュー」の設定と同じです。
 また、以下でサブイシューとして設定したものは、解く上で足し算にするものと掛け算にするものがあると思いますが、これもロジカルシンキングと同じですが、1,2について言えば、それぞれが独立になるように問いを立てており、同時に発生することが有り得ないように設定しているため、確率全体を出すときは足し算になります。(例えば、スマートフォンのマーケットサイズをフェルミ推定するような問題で、家庭用と仕事用に分解するケースと同じです。)

問題(1)

  1. 集団Aの中で、「X患者である人」が検査で陽性と判定される確率は何か?
  2. 集団Aの中で、「X患者でない人」が検査で陽性と判定される確率は何か?
  3. 1,2を踏まえて、「陽性と判定される確率全体」の内、「「X患者である人」が検査で陽性と判定される確率」の割合は何か?

問題(2)

  1. 集団Aの中で、「X患者である人」が検査で陰性と判定される確率は何か?
  2. 集団Aの中で、「X患者でない人」が検査で陰性と判定される確率は何か?
  3. 1,2を踏まえて、「陰性と判定される確率全体」の内、「「X患者である人」が検査で陰性と判定される確率」の割合は何か?

回答

 回答は、シンプルに書いてしまいます。全体の人数は分かりやすくするため、N人とします。

問題(1)

1. 集団Aの中で、「X患者である人」が検査で陽性と判定される確率は何か?

N\times4\%\times80\%

2. 集団Aの中で、「X患者でない人」が検査で陽性と判定される確率は何か?

N\times96\%\times10\%

3. 1,2を踏まえて、「陽性と判定される確率全体」の内、「「X患者である人」が検査で陽性と判定される確率」の割合は何か?

\displaystyle\frac{N\times4\%\times80\%}{N\times4\%\times80\%+N\times96\%\times10\%}=\frac{1}{4}=25\%

問題(2)

1. 集団Aの中で、「X患者である人」が検査で陰性と判定される確率は何か?

N\times4\%\times20\%

2. 集団Aの中で、「X患者でない人」が検査で陰性と判定される確率は何か?

N\times96\%\times90\%

3. 1,2を踏まえて、「陰性と判定される確率全体」の内、「「X患者である人」が検査で陰性と判定される確率」の割合は何か?

\displaystyle\frac{N\times4\%\times20\%}{N\times4\%\times20\%+N\times96\%\times90\%}=\frac{1}{109}\simeq0.92\%

さいごに

 実はほとんどの数学の問題をを解く上では、ロジカルシンキングを駆使しないと解けないことが多いのが事実だったりします。これは、数学だけでなく、物理や化学、生物等の科学分野の問題もそうですし、歴史等の問題でも同様です。ただ一方で、文系科目では知識を問う問題が多くなる傾向があるため、高1、2レベルでも数学等を勉強するほうがロジカルシンキングを鍛える意味では非常に良い気がします。
 ちなみに、個人的な意見ではありますが、東大や京大、早慶といった大学に受かっている中でも知識だけで受かっている人間もいれば、ロジカルシンキングを駆使して答えるべき問をしっかりと設定して受かっている人間もいますが、前者の人間が圧倒的に多いと思います。仕事において、学歴が高くても仕事が出来ない人間の多くが前者です。逆に言えば、学歴問わず成果を残せる人間は意外とロジカルに物事を考える力が強いですし、特にスポーツ等でトップレベルでやっていた方はこの傾向が強いです。とはいえ、ロジカルシンキングを意識し続けたかの差はかなり大きいので、色んなケースを通して勉強し続けてみてください。